Research topic 1

造礁サンゴの生体システムのモデル化

造礁サンゴを取り巻く環境は,様々なストレスや因子が複合的に絡み合っているため,飼育実験等でその影響の評価を試みた場合,膨大な実験の組み合わせが必要になってしまいます.さらにはサンゴ礁内の水温や炭酸系,栄養塩などの環境は一定ではなく,非常にダイナミックに変動していることが知られています.このように,複雑かつ複合的な影響を飼育実験によって評価することはかなり難しいことと言えます.

そのため,各環境要素に対するサンゴの応答の素過程を記述し,モデルによって複合的なストレスに対する影響を評価することは有効な手法の一つと考えられます.そのような発想からサンゴの内部応答の物理・化学・生理学的素過程を詳細に記述した,サンゴポリプモデルの開発を進めています.下はその概念図です.

 

サンゴポリプモデルの概観(上)とアラゴナイト飽和度に対する石灰化応答(下)(Nakamura et al. 2013)

このモデルは,現在のところ, サンゴの光合成や呼吸、Light-enhanced calcificationといった石灰化の基本応答や、流れに対する代謝応答、閉鎖環境での応答、海洋酸性化に対する応答などを再現することができるよ うになっています。

そこで,さらに多様な環境変化に対する応答を評価するため,高水温に伴うサンゴの白化現象(サンゴが細胞内で共生している褐虫藻を放出/消化してしま う現象.この状態が長く続くとサンゴは死亡してしまう.)や栄養塩,赤土の影響などのストレスに対する応答の素過程の解明や,そのモデル化に取り組んでい ます.